★『無気力になるパターンと自己イメージの検証』★
「無気力になるパターン」
何をする気も起こらない、無気力。周囲からガミガミ言われると、無気力の状態に陥りがちになるのだという。そこには、こんな2択がありました。
(a) 言われたことを拒否する → 相手を裏切った気がして、自分を責めてしまう。
(b) 言いつけに従う → 相手に屈服した気がして、自尊心が傷つけられる。
どちらを選んでも、いい気分はしません。
「いやな気分よ さようなら」のP118では、以下のような女性が紹介されています。
うつ症状に悩む女性。強い母親に常にあれこれ強要されてしまい、やる気が起きません。ずっとガミガミ言われるので、頑固に拒否するしかない状態。何かしようと思い立っても、そんな時にかぎって「○○しなさい!」と命令されるので、やる気をなくしてしまいます。
<患者> 十代後半の女性
<症状> うつ病
<布置> 外出したら人々にジロジロ見られるだろうと思ってしまう。強い母親にずっと強要されるのではという怖れ。
ずっと反抗していた――反抗するしかなかった――彼女ですが、やがて母親に同意するようになりました。しかし、屈服ではなくて、自分の選択であることを意思表明する。
「ちょうど、やろうと思ってたの。自分の決心で、動こうと思います」
「あなたが何を言おうと言うまいと、ずっとそうしようと思ってたんです」
こう言っても、相手は頑固なままかもしれません。この女性のように うつ症状まで引き起こすぐらいなら、そうなんでしょう。
それが誰であれ、相手を変えるのは困難です。だけど、忘れてはならないことがある。この場合であれば、「彼女と母親は別人格であり、同じではない」ということ。さらに、「彼女は悪くない」ということ。
客観的に見れば、分かります。いつも先回りされ、ガミガミ言われ、ひどい気分にさせられていることが。
(この辺のことについては、「毒になる親」でもいろいろ書いています)
「よい未来をイメージする」
無気力とセットになりがちなのが、先延ばし。
デビッド・D・バーンズは、そんな時はメリットを書き出してはどうかと、勧めています。それをすることで、どんないいことが待っているのか? それを書き出すことで、意識しようというのです。
<例>
ウォーキングすることで、どんないいことが起こるだろう?
・健康になる。
・体力がつく。
・生活習慣病の予防になる。
・ダイエット、メタボ予防になる。
・景色を楽しむことができる。
・季節を感じることができる。
こうして書き出すのが、第1ステップ。
第2ステップは、よい状況を想像すること。毎晩、寝る前に、気持ちよくそれをする姿を、思い描く。
秋の風景を見ながら、気分よく歩く。頬に当たる風が、心地いい。どこかで小鳥が鳴き、川のせせらぎが聞こえる。そんな風に想像しながら、リラックスします。は〜っと息を吐いて、筋肉の緊張を解いていく。
第3ステップでは、少し未来の自分を想像してみる。第1ステップで書き出したことが実現された様を、頭に思い描いてみましょう。だんだんと健康になり、体力もついてきた。季節を感じ、風景を楽しみ、気分がよくなっていく。
今までは、ネガティブな想像に支配され、無気力になっていました。今度は、その逆をやってみるのです。ポジティブな想像をする癖をつけ、だんだんと「今まで」を打ち破りましょう。
そして、その変化を少しずつでも実感できれば、しめたものです。
「やったことを数える」
「高い所から飛び込む」とか「飛び込むのを躊躇する」とか、そういう夢を見たことはありませんか? 夢は時に、現実や現状に対して、何かしらを伝えようとしてくれます。さて、夢の中で飛び込んだとして、その先には何があったでしょうか?
P122では、「尻込み」について触れられています。尻込みとは、気おくれして ためらうこと。これも何度も繰り返すうちに、癖になるのだという。何かにつけ怖れ、誰かが後押ししてくれるのを待ってしまいます。
<患者> 21歳男性
<症状> うつ状態
<布置> 自分では何も始められない。周囲の人が教えてくれたり、後押ししてくれるのを待ってしまう。
男性には、「自分は一人では何もできない」という強い想いがあったようです。それがいつの間にか、信念のようになっていた。
この考えに憑りつかれていた男性は、「それは本当だろうか?」と疑うことができませんでした。自動的に、そう思ってしまうのです。
ここにある認知の歪みは、心のフィルターとレッテル貼り。多くの経験の中から「自分ではできなかった」経験を抽出し、自分に「何もできないダメ人間」のレッテルを貼っている。(参照:「認知の歪み」)
彼がやったのは、まずは自分の認知の歪みについて知ること。そして、現状を変えるためにやったのが、「数えること」でした。
誰かから言われてやったのではなく、自分でやったことをカウントする。腕につけるタイプのカウンターで、何かやるたびに数えたのです。
「自分一人では何もできない」というのは、思い込みとイメージの世界。それを実際にやったことを数えることで、「おや、違うぞ」と気づいていく。イメージと現実のギャップを、意識するようになります。
数週間もすれば、かなり数字が増えました。それを見て彼は、「自分が自分を動かしていた」という事実を知ったのでした。これが自信を育て、自分の中に価値を見出せるようになりました。
「本当か確かめる」
今まで学んできたように、「そう思っていること」と「実際にどうなのか?」は別です。認知の歪みがあると、どうしても自己否定的なイメージが勝ちすぎてしまう。なので、「本当はどうなのか?」と確認することが、大切な鍵となります。
何度も書いてきたように、気分は反応。否定的なイメージが強くなると、どうしても気分が沈んでしまいます。それはまるで、実際には無い不幸を想像し、落ち込んでいるのも同じです。あるいは、確かに実際にあるのだけれど、それそのもの以上に拡大し、悲しみや落ち込みを大きくしてしまっている。
あなたは、「○○できない」と信じているかもしれない。でも、それが本当かどうかは、確かめてみないと分かりません。「確かめなくても分かる」というのは、確かめていないことの証明なのでしょう。
あと、「やり方」にも、注目した方がいいかもしれません。人は時々、「やれないようなやり方」を選んでいることがあります。例えば、たくさんのことを一気にやろうとしているとか。
これは見方を変えれば、徐々にやればできるとか、小分けにすればできるとか、そういうことを示しています。つまり、やり方を見直せば、ちゃんとできるのです。
「失敗への怖れ」
ネガティブな時は、失敗を必要以上に恐れるようです。そして失敗を避けるために、すること自体を放棄してしまう。何もしなければ失敗することもないと。
でも、それは、することで得られるものまで放棄しているということ。失敗を恐れるあまり、手に入るはずのものまで失っているのです。
ここでも、確かめます。想像するネガティブな結末を書き出し、それが本当か検証する。
そこには、事実誤認があるかもしれません。
「きっと、○○できないだろう」
→ 一度や数度の失敗を、「いつも」に拡大してないか?
→ できる限りの準備をし、やってみないと分からない。
「きっと、軽蔑されるに決まってる」
→ なぜ、決まっているのだろう?
→ 聞いてみないと分からない。
「失敗したら、人生が終わってしまう」
→ なぜ、人生が終わるのだろう?
→ 成功失敗は、「それ」だけについてでは?
「成功しているみんなが、うらやましい」
→ 本当に、みんなが成功しているのだろうか?
→ 成功している人にだけ注目しているのでは?
「気力が先か、行動が先か」
普通、人はこう思うのではないでしょうか?
「気力が出るから、行動できる」
でも、デビッド・D・バーンズによれば、そうではないそうです。
「行動が先にあって、そこから気力が出る」
行動 → 気力 → 次の行動
「ああ、やだな〜」とか、「ああ、面倒だな〜」というのは、誰もが思うこと。健康に暮らしている人でも、そうです。でも、やっているうちに、だんだんとエンジンがかかってくる。時には、楽しくなることさえあります。
ぐずぐず主義の人は、それをする気分になるまで、ずっと待ってしまいがち。なので、何もしないまま、時間だけが経過してしまう。
デビッド・D・バーンズは、「呼び水」を例えに使っています。古い手動ポンプを使ったことがある人なら、分かるでしょう。ポンプを動かしても水が出ない時、呼び水を入れてやることで、ポンプは動き出します。
やりはじめることで、気分が乗ることがあります。動くことでエンジンがかかり、気力が出てくる。
あなたのエンジンには、まだ火が入っていないのかもしれません。その火は、動かすことで点火するようです。
すでに今まで、いろんな手法を学んできました。
「日常活動スケジュール」
「ぐずぐず主義克服シート」
「満足-予想表」
「しかし-反論法」
「チック-タック法」
道具は目の前にあります。
まずは動きだし、エンジンがかかってくるのを実感してみてください。
続きは次回に…
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