【城太郎日記】ユング心理学・カウンセリング



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ここでは、デビッド・D・バーンズ「いやな気分よ、さようなら」をテキストに進めます。
このページは、「日常活動スケジュール、ぐずぐず主義克服シート、満足-予想表」について。

『日常活動スケジュール、ぐずぐず主義克服シート、満足-予想表』




前段階として、「認知の歪み」について学びましたが、そこには多くの決めつけがありましたよね。

そして、虚無感や身動きがとれない状態というのにも、これが関わるようです。動けないとか、やる気がしないとか、そこには「どうせ…」といった、決めつけの影が見える。

(といっても、だから悪いというのではありません。そう思うにはそう思うだけの理由や事情があるのでしょう)

認知の歪みにやられると、ネガティブな決めつけが先回りし、行動の機会を奪ってゆきます。

ということは、戦う相手が見えてきました。この考え方を何とかすれば、目詰まりはとれ、いろんなものが流れ出そう。

いつもの考えが邪魔する前に、動いちゃいましょう。動いたり意識することで、自動処理的な考え方と戦うのです。これぞ、デビッド・D・バーンズのいう、「いやな気分よ、さようなら」。



「日常活動スケジュール」


バーンズは、「いやな気分よ、さようなら」のP94で、「日常活動スケジュール」をつけることを勧めています。

この表は、それぞれの時間と共に、「予定」と「振り返り」というふたつの欄からなる。

時間は、「8-9」「9-10」という風に、1時間ごとに区切られ、縦に並んでいます。その各時間の横に、予定と振り返りが入る。

予定欄には、その日にやろうとする計画を書き込みます。掃除でも、食事でも、買い物でも、何でもいい。読書、仕事の準備、調べもの、そういう風に、時間毎に簡単に記入します。

そして、一日の終わりでもいいし、その時毎でもいいので、実際に何をしたのか、振り返りの欄に書いてみる。きっと、その通りにできたこともあれば、そうでないこともあるとは思いますが、それをそのまま書く。

ここでバーンズは、区分けすることを勧めています。

歯を磨いたり、食事を作ったり、仕事に行ったり、そういった義務的なものには、Мとつける。また、趣味に関するものなど、楽しみの活動には、Pと書く。さらに、Mならその仕事の難しさ、Pなら楽しさの度合いなど、0〜5でスケールを見積もります。正確さにこだわることはありませんが、だいたいでもいいので、書いてみる。

(また、アルファベットでは分かりづらいなら、自分で適当な漢字や記号を割り当ててもいいです。要は、やることが大事なのであって、やり方は自分流でいいでしょう)

それを踏まえて、掃除でも、簡単な掃除ならМ-1、大がかりな掃除だとМ-4などと、記入する。映画鑑賞なら、大いに楽しめたのならP-5と書けばいいし、落ち込んでいて楽しめなかったのなら、P-0とかP-0.5とか記入する。


認知の歪みでは、「実際」とか「その割合」が無視されていました。でも、書き出すことで、実際にしたことや、その割合が、見えてきます。

虚無感にやられていると、何もしないままに、考え――それも否定的な考え――だけが、どんどん湧き出ます。確かめないままに、すべてを「0」やマイナスに、想像する。そう思い込む。しかし、スケジュール表をつけることで、実際ではないことでくよくよ考え込むのではなく、実際のことを見るくせをつけるんですね。

(癖や習慣は、敵にもなりますが、味方にもなるのです)

確かに、すべてを思うようにはできないかもしれません。でも、全部できないわけでもない。ちゃんと、いくらかは、やれます。それに気づかせてくれるのが、この表なんですね。

表を前にして、はじめは悩んでしまうかもしれません。でも、できれば気楽に、書ける範囲で、仕事や義務と共に、遊びや楽しみも、記入してみてください。そこでバランスの悪さが見えてくれば、楽しみを増やすとか、忘れがちなやるべきことを赤字で書いておくとか、負担にならない程度に書けばいい。そして、できたことに対しては、自信を持っていいじゃないですか。


このように書き出してみると、「時間の使い方」も見えてくるでしょう。

表には、できることや、できたことが、書き込まれているはずです。

これにより、決して「0(ゼロ)」ではないことが、分かります。

それは、あなた自身が「0」やマイナスではないことをあらわしている。

認知の歪みにやられていると見えないものが、見えてくるはずです。





「バイバイ、ぐずぐず」


ぐずぐずの影にも、否定的な予想があるのかもしれません。「どうせ…」という思考は、一歩を躊躇させてしまいます。

デビット・D・バーンズは、「いやな気分よ、さようなら」の中で、「ぐずぐず主義克服シート」なるものを紹介してくれています。(P98)

これは、5つの欄からなる。

まず、「活動」として、先延ばしにしてきた仕事を書きます。仕事の中ですべきことを、分けて記入する。例えば、(1)として「概要を考える」。(2)として「下書きする」。(3)として「清書する」。あるいはその中に、「資料を集める」とか、「調べる」とか、そんな項目を入れてもいい。

活動の項目を記入すると、次に、「予想した難易度」について、記入します。どのくらい困難だと思うか、0〜100%で、記入する。すごく難しいと思えば、90%と書くとか。

その横には、「予想した満足度」を、これも0〜100%で記入します。

これで準備は整いました。実際に手順を踏んで、先延ばしにしてきた仕事に取りかかります。もしその仕事が大きいなら、段階に分けて、少しずつ手を付けてもいいかもしれません。広い部屋を掃除する時などそうですが、区画を分けて何度か掃除すると、最後には全部を掃除したことになります。たとえ何日か かかったとしても、実際にやり遂げたという結果は、ちゃんと残るのです。

各段階をやり終えたら、「実際の難易度」について、0〜100%で記入します。そして、予想した難易度と実際の難易度を見比べてみる。また、「実際の満足度」についても、同じように記入します。そして、予想していたものと、比べてみましょう。


認知の歪みがあると、困難さというものを、実際より大きく予想しがちです。「どうせ無理」とか、そういう考えが、クセになってしまう。このシートに記入することで、そういった傾向も、見えるでしょう。

「何だ、やってみると案外…」とか、「時間はかかったけど、やれたぞ」とか、いろいろ気づくかもしれません。


我々はいろんな事情により、動くのをやめてしまいます。

それが悪いというのではなく、善悪抜きに、気力を奪われてしまうんですね。

なので、それは悪いことではなく、むしろ気の毒なことでさえあります。

しかし、そこに留まれば、気分は落ち込む一方。

動かないことが、さらにマイナスイメージを加速させてしまいます。

意識しないままに、悪いことを考えることに一生懸命になってしまう。

なので、動いてみる。

動くことに力が回れば、その分だけ、考えることに回っていた力が無くなります。

「想像」から「実際」に、力が動く。

もちろん、そこにあるのが「いいこと」ばかりだとはいえません。嫌なことだってある。

でもそれは、どちらもあることであり、どちらかだけというわけではありません。

それを、「書くこと」で「意識する」んですね。


例えば、5回に1回、しんどいことがあったとしましょう。

余裕がある時、人は、「ああ、こんなこともあるんだなあ」ですませます。「しんどかったなあ」と思いつつ、流せる。

けれど、余裕がない時は、この1回が他の4回を覆ってしまいます。1回のしんどさが、そうでもなかった4回を覆い、○○とは しんどいものだ、となってしまう。

これがさらに進むと、過去や未来まで覆うことになり、人生とはしんどいものだ、となることも。

ここには今まで書いてきたように「割合の無視」が存在します。

その1回は間違いなくしんどかったにしても、他の時はどうだったか? というのが消えてしまっている。過去の改ざんや、未来の決めつけまで行っています。

デビッド・D・バーンズの試みは、書くことで意識し、その割合というものを実感しよう、というもの。

「何でも悪い」としがちな思考の癖を元に戻しましょう、という提言です。

悪いことがまったくなくなるわけではない。でも、悪いことだけにこだわることもない。自然な感覚を取り戻しましょう。嫌なものに注目するから嫌なのであって、他にも注目するようになれば、気分は自ずと変わってくる。

そういうことです…




「満足-予想表」

P102 では、「満足-予想表」なるものが、紹介されています。

これは、「何をやっても、意味はない」という考えを克服するためのもの。


1行目には、「日付」を書きます。

2行目には、「満足を求める行動」を書く。

3行目には、「誰と一緒に行動したか」を書きます。

4行目には、「予想される満足度」を%で。

5行目には、「実際の満足度」を%で書きます。


1週間なり2週間なりこの表を書くと、「予想していたもの」と「実際のもの」の差に気づくかもしれません。

そして、どんな時に自分は満足を感じているか、それに気づかされるかもしれない。



デビット・D・バーンズは、「ぐずぐず主義の原因となる思い違い」を、6つ提示してくれています。(P104)

このような思い込みにより、我々は自分の行動に制限をかけているのです。

ひとりでは楽しめないとか、何をやっても意味はないとか、○○しないと満足など得られないとか、勝手に思い込みます。そして、行動するのを止める。

上の表は、これに気づき、実際は必ずしもそうでないことを、教えてくれます。頭の考えと実際、予想した感情と実際の感情、それらのギャップを、目に見せてくれる。

そして、自分自身を救う、助けになってくれます。


結局、我々を落ち込ませているのは、我々自身の「考え」なのです。

(全部がそうともいえませんが)

「予想」や「思い込み」だと言ってもいい。

既に「認知の歪み」において、10のパターンは学びましたよね。

そんな自動の考えが、人間を落ち込ませ、ブルーにさせてしまう。


「○○に違いない」、そういう考えが、よく我々を落ち込ませます。

でも、それが実際なのかどうかは、分かりません。

それは「自分の中で生み出された考え」なのかもしれない。

あるいは、「受け継がれた伝統」みたいなものかもしれません。


もう、実際でないことで悩むのは、やめましょう。

悩むなら悩むで、実際のことを考えればいい。

そうすれば、何か打開策が見えてくるはずです。


生きている限り悩みが無くなるなんてことはありませんが、必要以上に悩むことはない。

なので、むやみに落ち込ませる考え方なんてこの際追い出して、自然な状態に戻りましょう。

もうそろそろ、卒業の時です…






<<「第4回 動くことで気分を変える、虚無主義・ぐずぐず主義」

 「第6回 しかしの克服、自分を認める方法」>>







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