★『チック-タック法と動機づけ』★
「チック - タック法」
人間が行動するには、エネルギーが必要。ひとつにはそれは食べ物によるエネルギーがありますが、それとは別に「やる気」とか「精神的なエネルギー」みたいなものも、あるようです。
認知の歪みにやられていると、そういったエネルギーが奪われてしまいます。「どうせ」とか「しかし」が思考の癖になり、悪いイメージが常駐、エネルギーを奪って落ち込ませるのです。今あるエネルギーは、否定的な考えや悪い予感を想像するのに使われてしまう。
「仕事を妨害する認知」のことをチック(TIC:Task-Interfering Cognitions)という。
そして、「仕事を方向づける認知」のことをタック(TOC:Task-Oriented Cognitions)という。
感情が反応であることは、既に理解していただいていると思います。ネガティブなイメージは気分を落ち込ませたり、いたずらに人を不安にさせたりする。何も考えなければスッとできることも、マイナスイメージを想像してしまうと、途端に緊張してしまいます。
なので、世の中には、成功をイメージすることを推奨する人もいる。自分がしっかりやれている姿を思い描き、それをやる気と自信につなげるのです。
<チック - タック法>
[TIC]
○○するなんて無理。
[TOC]
一度無理だったからといって、ずっと無理だとは限らない。
一度にやってしまう必要はないのだから、少しずつやってみたらいい。
[TIC]
自分のすることなんて、大したことない。
[TOC]
特別なことじゃなくても、人の役に立つことはたくさんある。
むしろ、ないと困る人はたくさんいるのでは?
「それをする」「そこにある」だけで役に立っていたり、
それがないことで不都合が生じることは、実は多い。
[TIC]
こんなことして、何になるんだろう?
[TOC]
完璧以外は価値がないかというと、そうでもない。
例え30%だとしても、それを3回やれば、90%に。
4回やれば、100%を超える。
また、続けることで力がつくことも多い。
[TIC]
きっと失敗するに違いない。
[TOC]
多少の失敗は当たり前。
大事なのは、それに気づいて直すこと。
失敗を恐れるよりは、それに気づき修正できるような方法を作ることが大事。
<心のくせ>
動きを妨げる傾向には、どんなものがあるでしょうか?
・一度(数回)の失敗を引きずる。
・卑下する癖(マイナス化)。
・完璧主義と、それならしない方がいい、という考え。
・失敗を予想する癖。
・恥や笑われることへの恐怖。
このような癖や考えが、動くのを躊躇させます。
<未来思考>
完璧主義者が陥りやすい、心の負担は何だと思います?
それはたぶん、「いっぺんにやろうとすること」。一度に完璧にやろうとし、できないことに落ち込む。あるいは、できそうにないと諦めたり、沈んだ気分になったりする。
現時点での能力を超えたものを自分に要求し、それで自分自身を困らせているのです。
でも、それが悪いと言っているのではないですよ。むしろ誰にでも、そういう時期はあるものです。例えば、新入社員の時など。先輩の実力を目の当たりにし、自信を喪失したり、自分の力のなさを痛感したりする。
でも、これって当たり前ですよね。「熟練」や「年季が入る」という言葉がありますが、これって時間がそうさせている部分があるので、最初はどうしてもそうはなれないのです。
さて、「いっぺんにやろうとする」傾向に戻りますが、これが無理なのは当たり前。となると、「する・しない」ではなくて「方法や やり方」に目を向ければいい。
つまりここでは、いっぺんが無理なら、数回に分ければいいのです。
分厚い本でも、数ページに分けて読めば、いつかは読み終えます。掃除だって、いっぺんには無理でも、部分部分に分けてやると、いつかは終わる。
こういうのを応用すればいいんです。
集中力の問題も、それと似ている部分があります。
ずっと集中しようとしても、それは無理な話。どこかで息を抜かないと、もちません。集中できないと悩む人の中には、四六時中 集中しようと頑張りすぎて、かえって集中力を失くしている場合もあるのです。
サッカー選手でも、ずっと全力疾走しているわけじゃありませんよね。ここぞという時には全力疾走。でも、そうでない時は、ゆっくり動いて力を温存します。自分の仕事をしっかり効率的にこなすために。
キッチリやろうとしてうまくいかない人は、ずっとキッチリやろうとして、かえって力を失くしている場合がある。ずっと力を入れているので、肝心な時には力が出ない。
うまくやっている人は、その辺のオンオフがうまいようです。
「いやな気分よ、さようなら」では、集中力を持続させる方法として、時間を区切ったり、制限時間を設ける方法を紹介しています。(P114)
・時には休憩すると決めて、その休憩の後に集中する。
・あるいは、終わりの時間を決めておいて、時間が来たら切り上げる。
完全さにこだわると切り上げにくいかもしれませんが、それでも止める。そこからは興味あることや面白いことに時間を使う。一度リセットすることで集中力を高めたり、自分に開放感を与えたりします。
「強制を伴わない動機づけ」
ぐずぐず主義の元は、不適切な自己動機づけにあるという。「〜すべきだ」「〜であるべきだ」が強すぎて、結果、自分を追いつめ、やる気をなくさせているのです。
そこで本では、「〜すべき」から「〜したい」に置き換えることを勧めている。
毎朝起きるのは、なぜでしょうか? それは内的には例えば、学校や会社に行かねばならないという義務感。外的には、親や先生、上司に叱られるからとか。ともかく起きねばならないので、目覚ましをセットしたり、誰かに起こしてもらう約束を取り付けたりします。
この状態では、「起床することで守られるもの > 睡眠欲」となるでしょうか。眠いけど、失いたくないものがあるので、無理にでも起床します。
でも、長期に及ぶ場合、こういうことが困難になる場合もあるかもしれません。我々が何とかやっていけているのは、おそらくは、休みがあるから。平日頑張っても、週末になれば休める。普段頑張っても、夏季休暇や正月休暇で休めると。
でも、「〜すべきだ」という縛りが強い場合、その負荷は大きくなっているかもしれない。過剰に緊張を強いることで却って休めず、結果として、ここでは「起床することで守られるもの」と「睡眠欲」が拮抗することになります。
ずっと緊張しているので、持たなくなる。
それに対する一つの方法が、上に書いた小休止を入れることですね。
・時には休憩すると決めて、その休憩の後に集中する。
・あるいは、終わりの時間を決めておいて、時間が来たら切り上げる。
あと、もう一つ方法があって、それが「〜すべき」から「〜したい」に置き換えること。
平易に考えてみましょう。「あなたは○○しなければなりません」なんて言われたら気が滅入ったり しんどくなったりするわけですが、「わたしは○○がしたい」となると また別だということです。
「強いられる」から「自分でする」になるわけですからね。
これが、「強制を伴わない動機づけ」というわけ。
P117では、「寝ていることの利点」と「寝ていることのマイナス点」を表に記入し――ということは言語化して――そうすることで生じる利益と不利益を、視覚化しています。
それは「思っていること」と「実際に起こること」でもあり、思い込みや錯覚に気づかせるものでもあります。
文字にして確認することで、「ああ、楽だと思ってたけど、損してたのか」とか「起きた方が得るものが多いのか」と気づくわけですね。
「武装解除法(disarming technique)」
やる気をそぐものには、周囲からの口うるさい言葉があるかもしれません。それはもう反応のようなもので、あれこれ言われると、ウンザリしたり反発したくなったりする。
本では、何かをしろと強要されると「勝ち目のない状況」に追い込まれてしまうと紹介されています。すなわち、拒否すれば相手を裏切った感じがして自分を責めてしまうし、従ったら従ったで相手に支配されたような気になってしまう。拒否しても罪悪感が湧き、従っても自尊心は傷つく、というわけ。
「○○しなさい!」 → 「今やろうと思ってたのに!」
こういうのは、よくありそうですね。
そこで本ではテクニックとして、一度 同意することを勧めています。
ただし、相手に従うのでも、相手にさせられるのでもない。
「自分もそう思ってたよ」と意思表明する。
その裏には、「あなたが何を言おうと、あるいは言うまいと、私はそう思ってたから、そうするの」という自発的な意識があります。
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