『人はなぜ絶望するのか?』
序文
イライラ、不安などの、情緒の問題。人付き合い、学校生活や仕事などの、実際的な問題。それらを突き詰めていくと、家庭の問題が浮かび上がることがあります。
そこにあるのは、親との戦い。
知らず知らず、傷つけられていた。荷物を背負わされていたり、罪悪感に苛(さいな)まれていたり。当たり前だと思っていたけど、実は度々、ウンザリさせられていた。
このようなことに、気づいていきます。
でも、気づいたからといって、それで終わるわけではありません。そこから始る不毛な戦いに疲れ、傷ついている人も多いことでしょう。
「なぜ、そんなことを言うの?(するの?)」
「どうして、そっとしておいてくれないの?」
「なぜ、分かってくれないの?」
頭を抱え、絶望の淵で、しゃがみ込んでいる人も、おられるかもしれません。
では、なぜ、そんなことになっているのでしょうか?
それは、「不毛な勝負に持ち込んでいるから」かもしれません。
<(01) 人はなぜ、絶望するのか?>
【絶望】 希望を失うこと。望みをなくすこと。まったく期待できなくなること。
ここでカギとなるのは、「状況が変わらないこと」「好転の兆しが無いこと」。
雨降りがとても嫌な人が、いるとします。雨が降ると、気が滅入ってしまいます。でも、そんな人だって、雨が降ったからといって、絶望しないでしょう。たとえ何日か続いても、絶望することはない。
それは、「雨がやむことを知っているから」。いつか晴れることを、経験的に知っているから。近い将来、嫌な雨はあがる。
人が絶望する時、そこにはきっと、こんな思考があるのでしょう。
「きっと、このまま、変わることはない」
誰かに傷つけられている時、「あの人はもう変わることはない」と思える。実際、毎度毎度、傷つけられたり、ウンザリさせられたりする。
「いつもいつも」が心身を蝕(むしば)み、人を絶望させます。
瞬間を捉えた第三者は、「そんなの大したことない」と思うかもしれない。でも、人生は、瞬間の連続。一コマでは語りつくせません。
ある人が爪でギュッと、強く押された。これは一瞬としては、大したことない出来事かもしれない。でも、毎日毎日、何度も何度も、同じ箇所にやられれば、やがて傷となり、化膿するかも。しかも、化膿した傷口に同じことをするので、事態は深刻化するかもしれない。
ある人に、気分の悪いことを言われる。これも、1回なら、大したことないかも。でも、毎日毎日言われれば、かなり堪(こた)えるはず。
生活習慣病がそうであるように、毎日毎日の積み重ねが身体を傷つけ、やがて死の危険だって…。心も同じで、たとえ些細(ささい)なことでも、習慣化されれば、バカにできないのです。
人が毎日ほぼ必ず出会う人が、家族になります。そして一番影響を受けるのが、親ということになるのでしょう。
サイト内の別ページでは、『毒になる親』という本を紹介しています。
原題は、『TOXIC PARENTS』。直訳すれば、「有毒な親」。親は一番身近な存在なので、そこに子どもを毒する要素 ―― 健康を害するもの、ためにならないもの、傷つけるもの等 ―― があれば、どうしても大きな影響を受けてしまう。
子どもは基本、親を信頼します。なので、疑いを持てない。また、罪悪感を持たされている場合も少なくないので、自身が毒されていることに、なかなか気づけません。
そして、気づいたとしても、「相手が変わらない」ので、傷が癒されることがない。
『TOXIC PARENTS』の副題には、こう書かれています。
「Overcoming their hurtful legacy and reclaiming your life」
「hurtful」とは、有害なとか、ひどいとか、感情を傷つけること。
「legacy」は、遺産。
「人間を傷つけるような遺産を克服し、自分自身の人生を取り戻す」
それこそが、問題解決の根源であると。
<アダルトチルドレンとは?>
アダルトチルドレンとは、「Adult Children of Dysfunctional Family」。機能不全家族で育った子どもが成人した人々のこと。分かりやすく言えば、子どもに悪影響を与える親に育てられ、大人になってからも影響を受け続けている人々のことです。
なので、「大人になりきれてない人」や「子どもっぽい人」ということでは、決してありません。むしろ、「機能不全家族で育った」という部分の方が大事。
(もともとは、「 adult children of alchoholics 」。アルコール依存症の親に育てられた人たちのこと)
なお、初めに断っておきますが、「グッバイ・ペアレンツ」とは親子の断絶や絶縁を意味するものではありません。「悪い影響から脱する」という意味。
具体的な方法を書いているわけではないし、これを読めば事態が好転するわけでもありませんが、気持ちの整理や罪悪感の脱出のヒントに一部でも役立てば、光栄です。
「第2回 子どもを縛る魔法の言葉」>>
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