【城太郎日記】ユング心理学・カウンセリング



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このページでは、表紙の過去ログ 08年9月分「第1回 コンプレックスとは?」「第2回 感情のカタマリ」を紹介をしています。

表紙過去ログ

    2008年09月(1):「第1回 コンプレックスとは/コンプレックス」
    2008年09月(2):「第2回 感情のカタマリ/コンプレックス」
【2008年09月(1)】


◇「第1回 コンプレックスとは/コンプレックス」◇



コンプレックス(complex )の特徴としては、「普通じゃなくなってしまう」とか、「落ち着きがなくなってしまう」とか、「普段どおりにできなくなる」とか、そういうものがあるでしょうか。

時に、激昂したり、ひどく落ち込んだり、何とも言えない感情に揺らされたり――特定の状況にある時、そうなってしまいます。しかも、それはなかなか自制することはできません。自制できるにしても、大きく消耗してしまったりします。

それは人によって、あるカテゴリの相手を前にしたとき発生し、またある人は、特定のカテゴリの場所に行こうとしたときに発生し、あるいは、本人には何も思い当たらないような状況で、発生するかもしれません。

ともかく、意識の統制を超えて、普通じゃなくなったり、落ち着きをなくしたり、普段通りにできなくなってしまうのです。



コンプレックスを辞書で引くと、以下のように書いてあります――

精神分析の用語。強い感情やこだわりをもつ内容で、ふだんは意識下に抑圧されているもの。心のしこり。観念複合(体)。エディプス-コンプレックス・劣等コンプレックスなど。

(三省堂「大辞林」より)

あるいは、河合隼雄先生はその著書「コンプレックス」の中でこうおっしゃっています――

このように無意識内に存在して、何らかの感情によって統合されている心的内容の集まりが、通常の意識活動を妨害する現象を観察し、前者のような心的内容の集合体を、感情によって色づけられた集合体(gefuhlsbetonter Komplex)とユングは名づけた。これを後には略して、コンプレックスと呼ぶようになったのである。

つまり、「何らかの感情によって統合されている心的内容の集まり」をコンプレックスと呼んでいるんですね。

言葉を変えると、「何らかの感情を主軸とし、それを中心に構成されている心的なカテゴリ」、「何らかの感情を核とし、その重力に引き寄せられるように集まっている心的内容の集合体」という言い方もできるでしょうか。

そして、英語の意味を持ってくるなら――

複雑な, 理解[説明]しがたい; 複合の;

(三省堂「EXCEED 英和辞典」より)

という捉え方もできるかもしれません。


これらをまとめると、

それは無意識下にあり、複雑な、理解や説明のしがたい、心のしこりのようなものであって、何らかの感情によって統合された、心的内容の集まりである――そう言えるかもしれません。

言い方を変えるなら、ある強い感情を伴なった体験が核にあって、しかし、それは何らかの事情で意識的には把握できない状態になっている。そして、あたかもそれが強い重力を持つように、他の似通った感情をも取り込み、集合体を形成する。

つまり、意識できない、それでいて身近な領域に、このようなカタマリができてしまうんですね。

そしてそれが時に、「通常の意識活動を妨害」したりします。故に、普通じゃなくなったり、落ち着きをなくしたり、普段通りにできなくなったりするのです。



そして、我々が実際に感じるコンプレックスの特徴というのは、以下のようなものかもしれません。

・主体性を脅かす(自らの意志や判断によって行動や態度を制御できなくなる)
・意志に反して湧いてくる(思わぬ感情が湧いてくる)
・意識外から行動を邪魔する(意志・意識通りに○○できない)
・意識外から行動を助長する(意志・意識に反して○○してしまう)
・制御できない(ともかく意識的にコントロールできない)

これらの作用により、我々は時に、思うように行動できなかったり、自らの思わぬ態度や言動に驚いたり、行動が制限されて困ったり、溢れ出る感情の処理に戸惑ってしまったりします。



(下に続く…)





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【2008年09月(2)】


◇「第2回 感情のカタマリ/コンプレックス」◇


我々はコンプレックスによって、思うように動けなくなったり、感情の制御に困惑したり、正体の分からぬ何ものかによって行動を制限されたり、意思に反した態度をとってしまったり、湧き上がる感情に憔悴させられてしまったりするのですが、そこには「感情のカタマリ」のようなものが存在するのかもしれません。



前回述べたように、コンプレックスとは、「何らかの感情によって統合されている心的内容の集まり」です。その集まり、カタマリによって、時に、カッとしたり、シュンとしたり、いつものようにコントロールできなくなったり、つまり、通常の流れが乱されたり、滞ってしまうんですね。

我々の意識できない領域、即ち無意識において、何らかの感情のカタマリができてしまっていて、それが流れを阻害するのです。まるで、心的な<血栓>のようですね。



血栓とは文字通り、血液が凝固してできる固まりで、それが血管の中で栓のようになってしまうわけですが、我々の心の中でもそのような現象が起こっているのかもしれません。

感情には流れる側面があるでしょ。

我々は何かに接することで、驚いたり、怒ったり、悲しんだり、喜んだりします。しかし、そういう状態がずっと持続するわけではなく、そういう感情は流れますよね。驚いてもやがて落ち着くし、怒ってもやがて怒りはひいていきます。悲しむことはあっても、ずっと悲しむわけではなくて、やがて普段の生活に戻るわけだし、喜びの感情だって、やがて収束していきます。こういう風に、感情というのは、内からわっと湧いてきて、やがてどこかに流れてゆくのでしょう。(流れて行く先がどこか、私は知りませんけども)

で、上が通常の状態ですね。血栓のない状態です。では、血栓があったらどうなるでしょうか?



血栓とは即ち、血の固まり(カタマリ・塊)が血管を塞いでしまうこと、血管内で栓をしてしまう状態です。それによって、虚血や梗塞が引き起こされたりします。

虚血とは、本来臓器や組織に流れてくる血が少なくなる状態のことで、それによってその部位が変性してしまったり、萎縮してしまったり、時には壊死してしまったりします。

梗塞とは、動脈がふさがることによって、その流域下の組織に壊死が起こることです。

(三省堂「大辞林」参照)


このようなことが、心の中でも起こっているのかもしれません。(あくまでイメージ上の話ですが)

我々の心の中にできた感情のカタマリが、本来流れてゆくはずの感情の流れを阻害し、あるいは後から来る感情がそのカタマリの核に付着し、蓄積され、カタマリはより大きくなっていくのかもしれません。




そして、血栓の場合は流れ行く先の組織に影響を及ぼすのですが、コンプレックスの場合、その前に処理されないカタマリの問題がありそうです。

通常状態では流れてゆく感情が、カタマリによって阻害され、いつまでも流れてゆかないわけですから、怒りがあるならいつまでも怒ることになるし、恐怖があるならいつまでも怖がることになるし、不安があるならいつまでも不安になるかもしれません。それは流れず、いつまでも「そこ」にあるので、いちいち反芻してしまうかもしれません。

思い出したように、感情が出てくるのです。

そして、今目の前にしているものによって生じている感情と、それを巻き込んでいるカタマリの核とは、似たような感情でありながらまったく同じとは限らないので、そこにギャップが生じてしまうかもしれません。あるいは、感情そのものはほぼ同じでも、その程度というものに差が生じるかもしれません。

ちょっとしたことなのに感情はすごく大きくなったり、問題ない程度のはずなのに問題になるほどの感情の起伏が起こったり、そうなってしまうかもしれません。



例えば、何かに怖れのようなものを感じる場合を考えましょうか。「畏れ」と言ってもいいです。

これはタイプによっても違うんですが、いわゆる「偉い人」あるいは「目上の人」に相対する場合、誰だって少しぐらい怖いと思うでしょ。畏敬の念を抱く、と言ってもいいかもしれません。

でも、多少怖いと思いながらも、言葉を交わしたり、挨拶したりします。緊張しながらも、なんとかなるでしょう。

しかし、何らかのコンプレックスを抱えている場合、その「怖い」という感情は以前からあるカタマリに巻き込まれるので、より強い恐怖となるかもしれません。今生じたちょっとした怖さがきっかけになって、流れることなく残ったままになっている他の怖さも起こすことになって、すごく怖いと思うかもしれません。眠っていた感情まで呼び起こされてしまうんですね。

こうなると、通常怖いと思いながらも対応できるようなことでも、すごく怖くなって対応できなくなりますよね。

それは今生じていることのようで、今まで蓄積してきたものでもあるのですから。



コンプレックスの特徴として、こういうものもあるのかもしれませんね。



「第3回 修復しようとした試み」に続く…)









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